ある日。
無印のソファに埋もれていたとき、娘がやってきておなかに乗ってきた。
そのまま娘ごと布団をかぶれば、娘は4年のときをさかのぼって、娘はふたたび胎児になった。
「今、ママのおなかには赤ちゃんがいるの」
「とってもいい子なのよ」
「男の子かな、女の子かな?」
とひとりごちてみたら、律儀に、男の子のところで頭を振り、女の子、のところで首を縦に振る。
自分から性別を教えてくれる健気な胎児である。
しばらくすると「もう生まれていい?」と聞いてくる。
出産のときを母に教えてくれる、これまた周到な胎児である。
「もう少し、ゆっくりしといて」と言ったのに、
布団の暖かさと一緒に、そのうち娘がもぞもぞ出てくる。
本当の陣痛に比べたら暢気きわまりなくてはたかれそうだが、私自身が予定帝王切開経験者で陣痛がわからないのと、本気で痛がって実際の出産を再現することが目的ではないので、
「うーん、うーん、生まれそうー」と10秒くらいすると、ニコニコした娘が出てきて、再びおなかに乗ってくる。
「プリンセスが生まれたよお」と言うので、
「あらあ、かわいいプリンセスが生まれたっ」と合わせる。
「かわいいから、お名前はまいちゃんにしよう。プリンセスまいちゃん、今日からよろしくね。ママのところに来てくれてありがと。」
布団から生まれたばかりの娘が、ほかほかあったかい。
息子が、姉の誕生を不思議そうに見ている。